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「稼ぐデザイン力!2.0」 より〜【事例紹介】株式会社 エンジニア〜

経営者・管理職のためのデザイン戦略入門
「稼ぐデザイン力!2.0」 より 抜粋
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 【事例紹介】株式会社 エンジニア

『MPDP理論で創造するヒット商品』

【企業紹介】
 エンジニアブランドのプライヤー・ペンチを主力とした工具メーカー(本社 大阪市東成区)潰れたネジの頭をつかんで回せるプライヤー「ネジザウルスGT」が大ヒット商品となり、一躍脚光を浴びている。MPDP理論を用いたヒット商品開発手法も同時に大きな注目を集めている。
http://www.engineer.jp/

 ネジザウルスをご存知でしょうか?

 工具好きの方なら「ああ、あれか」とすぐわかるほど、工具として異例のヒットを記録しているのが、ネジザウルスです。

 ネジを締め付けているとネジ頭の十字の回す部分が潰れてしまうことがあります。こうなると回して外すのも締めるのもできなくなって困った経験がないでしょうか?これを簡単に外せるようにしたプライヤー(ペンチ)がネジザウルスです。ネジザウルス初代は2002年に発売、同シリーズの4代目が2009年発売の「ネジザウルスGT」です。

 ネジザウルスシリーズは、発売開始以来10年間の累計で160万本を売り上げる大ヒット商品となっています。特にシリーズ4代目「ネジザウルスGT」になってから急激に売上げを伸ばしました。ホームセンターでは既に定番商品として売り場の一角を占めているところが多くなってきました。
 またネジザウルスGTに続く新商品「鉄腕ハサミGT」も、発売から20ヶ月で8万本を超えるヒット商品に育っています。立て続けに大ヒットを飛ばす企業エンジニアの商品開発にはどのような秘策があるのでしょうか?
  
 どの企業でも、いわば喉から手が出るほど欲しいのがヒット商品です。1つのヒット商品が会社を救う事例がありますし、その商品だけで1社の利益の半分以上を稼ぎ出す例も見かけます。
 ヒット商品をどう生み出すか、は企業の永遠のテーマです。実はエンジニア社のヒット商品は偶然の産物ではなく、独自の商品開発理論に基づいて生み出されています。「MPDP理論」と名付けられた同社の商品開発理論は、盧蠎卍垢猟糠の商品開発の苦闘の中から編み出されました。いったいどのような手法なのでしょうか。

 MPDPのMはマーケティング(市場調査)、Pはパテント(特許など)、Dはデザイン、Pはプロモーション(販売促進)の頭文字です。
盧蠎卍垢砲茲譴弌◆屬海裡瓦弔里Δ舛匹譴1つが欠けてもヒット商品は生まれない」と断言します。ネジザウルスシリーズの開発ストーリーを例に挙げてMPDP理論を検証してみましょう。

M:マーケティング
 企業によっては商品開発の際に市場調査をせずに、思いつきで企画を立ててしまうことがあります。しかしこれほど無謀なことはありません。市場のニーズをいかに拾い上げるか、は商品開発の根幹となります。

 ネジザウルスGTの場合は、それまでの3シリーズのユーザーから得られた愛用者カード約1000枚の分析から始めました。

 要望が多かった5つの機能を盛り込み、ネジザウルスGTが完成しました。販売を開始して驚いたことに、ユーザーから最も評価が高かったのは、千人中僅か7人の方から要望があった5番目の機能、「頭が1ミリ程度しかでていない薄い(トラス)ネジを回したい」でした。ほとんどの人が気がつくような改良をするだけでは評価されません。「メーカーなら当たり前だろう。」「自分もそれくらいは考えていたよ。」という感じです。少数の意見の中に、きらりと光るニーズがあるのです。ユーザーの潜在意識下のニーズを探り当てる事、これが大変重要なプロセスなのです。

P:パテント
 ネジザウルスは、プライヤーの先端に縦溝が切ってあります。これが潰れたネジを回せる秘密なのですが、この部分で特許を取得し、他のメーカーへの参入障壁としています。実際、この特許のおかげで大ヒット商品になった今でも、類似の商品はほぼ出ていないとのことです。

 そのエンジニア社でも、過去には「特許を出願した」というだけで満足していた時期がありました。しかしそれだけではビジネスに効果をもたらさない、PAT・Pの表示だけでは消費者が買ってはくれない、と気づいたそうです。

 パテントにおいて重要なのはビジネスにおける費用対効果です。それには特許が良いのか、意匠権なのか、商標なのか、あるいは国際特許を取るにしてもどの国で取ればいいのか、またPCTという国際出願制度もあります。すべては「ビジネスとの兼ね合いで一番効果的なパテントの取り方を考えることが重要だ」と言います。

 むやみやたらと特許を取って自己満足する企業、または反対に特許は効果がないから、といって全く取らない企業、どちらもビジネスの成功には結びつきません。また、特許の場合はある程度の専門知識が出願する側にも必要だと言います。エンジニア社では、社員の半分が「知的財産管理技能士」3級または2級を取得しています。この資格は特許の基礎的な知識の得るのに最適で、他の企業も進んで取得した方が良いとのアドバイスを頂きました。
 この資格を取ることで、基礎的な知識を備えた上で弁理士と議論することができるため、より的確により短時間で専門家のアドバイスを受けることができるということです。

D:デザイン
 ネジザウルスGTのデザインはサバイバルゲームが好きな社員がデザインをしたそうですが、ネーミングとマッチしていて非常に上手くまとまっています。ユーザーにこれは特別なプライヤーだよ、と視覚で訴えるデザインに仕上がっており、また他社製品との差別化にも成功しています。

 エンジニア社のすごいのは商品自体のデザインのみならず、パッケージ、売り場での見せ方、販促ツールなど全てにデザインが活用されていることです。これは非常に重要なことで、商品を作ってデザインして終わりではなく、商品の良さを伝えるためにデザインはあらゆる面で活用できるという良い事例です。

 同社では、商品自体のデザインを当初は社内で行っていましたが、現在は外部のデザイナーに依頼しています。その活用の仕方もユニークで、「商品開発の2合目と8合目でデザイナーに相談する」のだそうです。

 2合目というのは商品の企画がある程度の固まった段階。この段階では、これから長い商品開発という山を登るのににどういったルートがいいのか、どうすれば効率的なのか、など幅広い意見をデザイナーに聞くのだそうです。特に外部にデザイナーはたくさんの異なる業種の情報を持っているので、こういう方法もある、こうした事例がある、とヒントをたくさんくれます。また最終的な完成形状をお互いに想定しながら相談すれば、ゆくゆくはデザインの最終工程での作業もやりやすくなります。

 また8合目というのは、設計や仕様がほぼ固まった段階です。この時点ではデザイナーに最後のフィニッシュワークを依頼しています。デザイナーにプロとしての仕上げを依頼して商品の完成度を高めているのです。

P:プロモーション
 いくら良い製品を作っても、ユーザーに知ってもらわなければ売れません。このためエンジニア社では様々なタイプのプロモーションを仕掛けています。

 ホームセンターの売り場では、実際の潰れたネジの実物とネジザウルスをディスプレイして、ユーザーにネジが外しやすいかどうか体験してもらっています。また社員が商品の歌を作ったり、商品のキャラクターをつくったり、商品開発ストーリーをマンガの冊子にする、など様々なプロモーションを仕掛けています。社員が進んでプロモーションに関わる点は同社の大きな強みになっています。

 MPDP、この4つの手法をバランス良く組み合わせることで、エンジニア社のヒット商品は生まれます。

 同社でも、以前はマーケティングだけ、パテントだけ、デザインだけ、プロモーションだけ、と1つに頼って商品開発をした時期が長くあったそうです。しかしそれはどれもうまく行きませんでした。そこで、ネジザウルスGTが大ヒットした後で、この商品がどうして成功したのかを分析した結果、MPDPの組み合わせがヒット商品を生むのだ、という確信を得たそうです。

(続きは「稼ぐデザイン力!2.0」 にて)

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at 08:51, プロフィール, 経営とデザイン

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